まるで桜の花びらのように、透明感のある淡いピンク色の桜貝。
Lino Drops Kamakuraでは、鎌倉の由比が浜で拾った桜貝をつかって、毎日の暮らしに寄り添うアクセサリーをつくっています。
海辺を歩いて、貝殻を拾う作業から、本来の美しい貝の色を引き出す洗浄の工程、パーツづくりから仕上げまで。すべてをLinoのアトリエで、ひとつひとつ手作業で、手間ひまをかけて丁寧につくりあげています。
着色料や漂白剤はいっさい使いません。
桜貝そのものの色味をいかした、ぷっくりと愛らしい形のアクセサリー。
自然のものだから、すべてが一点ものなのです。
Lino Drops Kamakuraが、桜貝アクセサリーづくりを始めたのは2012年。
当時は、ハンドメイドが流行り始めた頃で、
桜貝を使ったアクセサリーはめずらしいものでした。
他にないなら、自分たちで良いものをつくろうと、
デザイン、仕上がりの艶感、着け心地にこだわり、長く愛用できるアクセサリーにするために、試行錯誤を繰り返して、ようやく今の製法を編み出しました。
なかには、特許を取ったひみつの技術もあり、こだわりのすべてはお見せできませんが、
Lino dropsの桜貝アクセサリーができるまでの制作工程をご紹介いたします。
1. 桜貝拾い
春夏秋冬、季節を問わず、定期的に由比が浜を歩き、専門のスタッフが桜貝を拾っています。
自然のものだから、どのくらい収穫できるかは、海まで行ってみないと分かりません。
波打ち際を歩きながら、淡い花びらのような桜貝を見つける作業は、毎日の運試しのような感覚もあり、効率さが求められる作業でもあります。
桜貝拾いにかける時間は、だいたい1時間から、長いときには2時間ほど。
とても地道な作業ですが、この海辺での出会いから、すべてのアクセサリーづくりがはじまります。
2. 洗浄
海で拾ってきた桜貝は、まず表面についた汚れを落とすため、すすぎ洗いをします。
桜貝はとても薄くて、繊細なので、割れないように気をつけながら、軽く指先でこするようにして、砂やぬめりを落としていきます。とくに、めずらしく2枚が対になっている桜貝は、外れてしまわないように、そっと優しく触れて、洗っていきます。
さらに、すすぎ洗いをした桜貝を、瓶に入れて真水に浸けおき、約1年間をかけて洗浄していきます。そうすることで、水の中の成分によって浄化作用が働き、すすぎ洗いだけではとれないぬめりや臭いを取ってくれるのです。
一年間、水に漬けっぱなしというわけではなく、途中で何回か、すすぎ洗いと水の入れ替えをします。手間を惜しまず、お世話をすることで、桜貝の自然の色味をより美しく引き出すことができるのです。
3. 合格判定
およそ一年間をかけて洗浄した桜貝は、専門のスタッフの判定で合格したものだけを乾燥させて、次の工程にすすみます。
目に見える汚れや、ぬめりが落ちたあと、合格判定のポイントとなるのは、におい。
汚れが落ちると水に浸透した汚れが、独特のにおいとなって現れます。その独特のにおいを感じなれければ、汚れが落ちきっていると判断します。
4. 貝殻の分類
合格判定がでた桜貝は、まず、完全形のものと、欠けや穴があるものに分けられます。Lino dropsのラインナップには、きれいな完全形の桜貝を使った「さくらひとえ」シリーズと、欠けや穴のある桜貝を使ってデザインする「さくらゆめみし」シリーズがあるので、それぞれパーツの準備をすすめていきます。
完全形の桜貝は、より美しい状態にするために工具を使って全体を磨いていきます。このひと手間を加えることで、桜貝の表面が艶やかになり、淡い色味がぐっと映えるのです。
欠けや穴のあるものは、砕いて、色と大きさ別の粒状にしていきます。桜貝をレッド・オレンジ・ピンク・ホワイトの4色に色分けして、ピンセットを使って、それぞれの色を抜き取り、さらに細かく砕いて、3種類の粗さの粉をつくります。
これらが「さくらゆめみし」のパーツになるのです。
5. 樹脂コーティング
Lino dropsの桜貝アクセサリーのいちばんの魅力は、雫のようなまあるく愛らしい桜貝のパーツ。このぷっくりとしたフォルムのひみつは、特別な樹脂を使ったコーティングにあります。
磨かれてさらに艶やかになった桜貝を並べ、細いマドラーを使って樹脂を少しずつ流し込むようにして、コーティングしていきます。仕上がりの形をイメージしながら、貝殻の際まで塗っていくこの作業が、じつはいちばん難しい工程。
樹脂が溢れてしまうと、せっかく一年以上かけて洗浄した桜貝が使いものにならなくなってしまうので、こぼさないように雫のような形になるように、ぎりぎりの加減で、細やかに仕上げていきます。
初めはさらさらしている樹脂が、時間とともに、ドロリと固まり始めてしまうので、
限られた時間のなかで、どれだけの桜貝を手際よくコーティングできるか、時間との勝負でもあります。
きれいにコーティングできた桜貝は、樹脂が完全に乾くまでに一週間ほどかかります。
表と裏あわせると二週間ほど、ゆっくりと寝かせて、しっかり樹脂を定着させます。
*こだわりの樹脂を使っています*
Lino drops の桜貝アクセサリーで使っている樹脂は、ハンドメイドアクセサリーでおなじみのUVレジンではなく、一般には手に入らない、特別に取り寄せているものです。作り手のLinoが製造業に務めていた当時のネットワークをいかし、さまざまな樹脂を試したなかから、より軽やかで、仕上がりの艶感や美しさが長持ちする、とっておきの樹脂を選びました。
ハンドメイドでも、長く愛用していただけるのは、この樹脂のおかげでもあります。
6. アクセサリーのパーツ選び
樹脂が乾いたら、穴をあけて、ようやく桜貝のパーツの完成です。
最後に、アクセサリーの組み立ての作業。桜貝の色味や大きさにあわせて、何をつくるか決め、パーツをあわせていきます。
一見、流れ作業のように思えますが、桜貝はふたつと同じものがない、自然のもの。
ピアスやイヤリングのように、ペアで1セットのアイテムは、組み合わせを探すのがそう簡単ではありません。仕上がった桜貝のパーツをずらりと並べたなかから、ペアに見えるふたつを選んでいく作業は、まるで桜貝のお見合いのようです。
7. 仕上げ
桜貝と金具だけのシンプルなアクセサリーもあれば、色とりどりの石をあわせたものもあり、ひとつひとつを手作業で丁寧に仕上げています。
海で桜貝を拾った日から、一年以上。
ここには書ききれなかった工程も含めると、すべてで50を越える作業を経て、
ようやくお店に並べられるアクセサリーができあがるのです。
*ショップオーナー兼アクセサリー職人 Linoからのメッセージ*
アクセサリーをつくる数がふえても、機械的に量産するのではなく、ひとつひとつを楽しみながら作っています。例えば、海で拾ったばかりの桜貝と、乾いた状態、樹脂でコーティングされた状態では、桜貝はまったく違う表情を見せてくれます。たいしたことのない一枚のように思えても、洗浄すると、見違えるようにパッと色がきれいに映えてくる貝がある。「あなた、こんなに綺麗な色だったのね」と思わず嬉しくなります。
ネックレス、ピアス、リング、アンクレット…。鎌倉の店舗には、200種類以上の桜貝アクセサリーが並びます。似たような色味の桜貝でも、あわせるパーツごとに雰囲気が変わるのも面白さ。
どんな彩りのアクセサリーに出会えるかは、その日のお楽しみ。
ぜひ、一期一会の出会いを楽しんでください。